FC2ブログ

記事一覧

こらむ・シネマ百景 第165回 “忘却と暴虐と”

映画ライター 服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』 忘れられない、忘れたくない存在への未練や後悔が、チベットの山間の村で一見平穏に暮らしてきた夫婦やその周囲に、愛憎まじりの波紋を投げかけていく『巡礼の約束』。ある夢にうなされ泣きじゃくりながら目覚めた朝を機に、突然ラサへ巡礼の旅に出ることを決意する妻と、彼女の真意を量りかねながらも、その覚悟のただならぬ気配に引きずり込まれていく夫。“五体投地”なる...

続きを読む

こらむ・シネマ百景 第164回 “虚しさとやるせなさと心強さと”

 新年早々、やりきれないこと続き。先日発表されたアカデミー賞でも候補となるなど国際的に称賛されているフランス発の異色アニメーション『失くした体』(19)の、幼少より失ってばかりいる孤独な青年の抱える虚無に共感しつつ、心の空白を埋めるためだけに生きてきたような彼が、淡い恋を知り、自分の意志で引き起こす小さな奇跡に、ぽろりと涙。https://www.netflix.com/jp/title/81120982 洋画と日本画の素養を兼ね備えた風...

続きを読む

こらむ・シネマ百景 第163回 "アナログびいき"

 作家と読み手との橋渡し役として、長年にわたり多彩な魔法をかけてきた装丁家・菊地信義の謎のベールに包まれた仕事の奥義や、多彩な職人たちとの連携による製本の工程を、『夜明け』(19)で監督デビューを飾った広瀬奈々子監督が丹念に紐解いていく『つつんで、ひらいて』。穏やかな口調に冷静な思慮深さを秘める広瀬監督の問いかけに、時に真摯に、時に微妙に焦点をぼやかしながら飄々と応える菊地氏の話に耳を傾けるにつけ、...

続きを読む

こらむ・シネマ百景 第162回 “いきどまりの先に”

刑務所に精通するTVマンと元犯罪者という異色コンビの共著で、英国推理作家協会賞など数々の賞を受賞した話題作を映画化した『THE INFORMER/三秒間の死角』。妻を守りたい一心で暴漢を殺めてしまった退役軍人が、愛する家族との暮らしを取り戻すべくFBIと秘密裏に手を組み、刑期を大幅に早めて出所。大物逮捕につながる情報を得るべく麻薬組織に潜入するも、最後のミッションとなるはずだった取引現場で予期せぬトラブルに巻き込...

続きを読む

こらむ・シネマ百景 第161回 "不機嫌な理由"

ヴァカンス気分に浮かれる夏の鎌倉を舞台に、なぜかいつも仏頂面なヒロインの孤独な抵抗を描く『お嬢ちゃん』。皮肉交じりのタイトルよろしく、異性からも同性からも愛される容姿に恵まれながら、そんなものは自分本来の存在価値にあらずと好戦的な態度を貫くみのりは、持て余し気味の時間を自堕落に食いつぶす人びとに、真っ向から物申す。事件らしい事件も起こらず、あまりにナチュラルすぎて思わず吹き出してしまう他愛もない会...

続きを読む